ポツダム宣言と降伏の作法2015年05月23日 16:16

 安倍首相が共産党の志位委員長との党首討論で、ポツダム宣言をつまびらかには読んでいないという国会答弁をしたことが話題になっている。どうも本当に読んでないようなので、安倍首相は戦後レジームの脱却をとなえているが、こんな日本国総理大臣で本当に中国やロシアにはもちろんアメリカにも理解が得られるのであろうかと危ぶまれる。
 昭和天皇は昭和20年8月14日に、戦況が悪いので「堪へ難キヲ堪へ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ万世ノ為ニ太平ヲ開カムト欲」して、ポツダム宣言を受諾することにするという「終戦の詔書」を発した。この終戦の詔書は天皇自ら読みあげて録音され、翌8月15日いわゆる玉音放送として、NHKより全国民にむけて放送された。
 ポツダム宣言は1945年(昭和20年)7月26日米国、英国、中華民国の首脳の名の下にポツダムで宣言され、後にソ連も加わったもので、13項目からなり、無条件降伏を求め、領土問題に関してはそれに先立つ1943年12月1日のカイロ宣言を履行することに触れている。
 連合国側に対する降伏の作法としては、天皇は昭和20年9月2日に政府と大本営に対して降伏文書に署名するよう命じたという内容の「降伏文書調印に関する詔書」を発し、同日米艦ミズーリ号上で降伏文書が調印された。
 領土問題に関して、カイロ宣言では「(米英中3国)同盟国ノ目的ハ日本国ヨリ千九百十四年ノ第一次世界戦争ノ開始以後ニ於テ日本国カ奪取シ又ハ占領シタル太平洋ニ於ケル一切ノ島嶼ヲ剥奪スルコト並ニ満洲、台湾及澎湖島ノ如キ日本国カ清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スルコトニ在リ」とある。
 カイロ宣言に関しては、署名がないなどと、その有効性に対して台湾独立派から疑問を呈する向きもあるが、いずれにしてもポツダム宣言の第8項は「カイロ宣言ノ条項ハ履行セラルヘク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ」となっているので、日本が本州、北海道、九州及四国以外の島に関して主権があるかどうかは連合国が決めることを認めたことになる。
 なお日本に知らされたことではないが、1945年2月11日に米英ソ間でヤルタ協定が結ばれ、ソ連を参戦させる条件として日露戦争でロシアから得た日本の領土権益は旧に復すること千島列島はソ連に引き渡すことなどが認められている。
 ポツダム宣言は連合国側の主張として第6項で「日本国国民ヲ欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ挙ニ出ツルノ過誤ヲ犯サシメタル者ノ権力及勢力ハ永久ニ除去」することを宣言している。戦争は外交の失敗の結果であるから、間違った戦争とか正しい戦争とかの議論はあまり意味が無いのだが、降伏文書に署名した以上、日本の戦争の大義や日本側の領土に関する認識を主張してみても相手には通用しない。とりわけ現在のロシアと中華人民共和国には通用しないであろう。現在の問題として粘り強く外交努力を続けるしかない。