もんじゅ検討会への期待2015年11月18日 17:53

原子力規制委員会は、平成27年11月13日付けで、文部科学大臣に対し、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(以下「機構」という)が設置する高速増殖原型炉もんじゅ(以下「もんじゅ」という)に関して以下に記す事項について検討し、おおむね半年を目途として、これらについて講ずる措置の内容を示すよう勧告をおこなった。

一 機構に代わってもんじゅの出力運転を安全に行う能力を有すると認められる者を具体的に特定すること。
二 もんじゅの出力運転を安全に行う能力を有する者を具体的に特定することが困難であるのならば、もんじゅが有する安全上のリスクを明確に減少させるよう、もんじゅという発電用原子炉施設の在り方を抜本的に見直すこと。

これを受けて、馳浩文部科学大臣は12月半ばにも検討会を開催し、来年の夏までには結論を出したいという見解を述べている。

そこで検討会に期待する私見を以下に述べる。

上記の一に関して、もんじゅに関わる職員は機構以外にもんじゅを運転できる者はないと自負しており、機構の児玉理事長も機構としてもんじゅに対する責務を果たしていくことを表明している。おそらく原子力規制委員会も多くの原子力関係者ももんじゅを運転するとすれば機構以外にはできるところはないと考えていると思われる。つまり、規制委員会も機構も一が不可能であるという点では一致しているであろう。規制委員会はそれに対する助け船として、もんじゅの在り方を抜本的に見直すという選択を勧めていると考えられる。
一の検討にあたって、これまでもんじゅの設置者は旧動燃から始まり、核燃料サイクル機構に看板を書き換え、さらに原研と統合して現在の機構にと看板が換わったが、事態は改善されなかった背景も考慮してか、看板の書き換えでは済まないと規制委員長は述べている。したがって、今後もんじゅ部門を独立させてもんじゅ発電所としたり、日本原電に統合したりするのではこれまで同様の看板の書き換えということになり受け入れられないであろう。そのような状況で、ゼロから機構に代わる組織探しの検討を行えば半年かけても結論が出ないかも知れない。そのうちに参議院選挙が近づき、政治的な配慮に巻き込まれ、検討会での純粋な科学技術的な議論が歪められるおそれが出てくる。

したがって検討会では、まず一については困難であることを確認し、二について検討を急ぐべきである。

上記の二に記されている、もんじゅの在り方を抜本的に見直すということに関しては、もんじゅという発電用原子炉施設の在り方を問われているのであり、高速増殖炉の研究開発や核燃料サイクルの政策を問われているのではない。原子力規制委員会におけるもんじゅの議論に関して、林幹雄経済産業相が6日の閣議後の記者会見で「政策に直接影響を及ぼすものではない。計画通り核燃料サイクルは推進していく」と述べているのは勧告に対するそうした認識を示していると考えられる。
高速増殖炉の研究開発に関しては、福島の事故で中断したとはいえ、高速増殖炉サイクル実用化研究開発(英語名FaCT)というプロジェクトを経産省・文科省・電気事業者・メーカー・原子力機構の五者協議会のもとで進めており、さらに昨年5月安倍首相訪仏時に、フランスの第4世代ナトリウム冷却高速炉実証炉(ASTRID)計画に参加すべく協力に関する取決めに署名している。
これらの研究開発にとって、もんじゅの成果を利用することが期待されてはいるが、必ずしも今後もんじゅを再稼働することが不可欠ではなく、これまでの経験をまとめて報告することで、研究開発に貢献できるであろう。また高速炉の基礎研究のためには、引き続き機構の高速炉「常陽」を利用することができる。
一方、昨年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画において、もんじゅに関しては今後廃棄物の減容・有害度低減等の研究を行う拠点とし、これまでの研究の成果のとりまとめに入ることが期待されている。これはもんじゅの高速増殖炉研究の使命を終えることを認めたうえで、もんじゅを残すために廃棄物の減容等の課題を付け足したものと考えられるが、付け足された課題についてはもんじゅを使わねばできないということではない。

したがって検討会ではまず「もんじゅから燃料とナトリウムを抜き去り、今後(廃炉を視野に入れて)、もんじゅの運転再開はしないこととして運転中止し、安全に管理する。」ことを早急に決定し、その上で廃棄物の減容等の課題のための方策について時間をかけて検討すべきである。
燃料とナトリウムが無い状態で再稼働しないということであれば、その安全管理に関して機構に能力があることを規制委員会も認めると考える。

その後のこととして、もんじゅの敷地は活断層の有無などに関して原子力施設がおけないという判断ではないことから、もんじゅの敷地や建物を利用できる限り利用して、廃棄物の減容等の新しい試験研究施設を設置することにより、エネルギー基本計画との整合性をはかり、地元の理解を得るようにする。
なお、新しい施設として例えば、加速器駆動システム、プルトニウム・ウラン混合燃料(MOX)の代わりにプルトニウム・トリウム混合燃料にする、冷却剤にナトリウムを使う代わりに鉛・ビスマスを使う、などの基礎研究開発のための試験研究施設が考えられる。これらの研究の一部は既に機構においてJPARCを利用するなどして要素設計研究が始められていることでもあり、旧原研と旧核燃料サイクル機構との統合を象徴する事業として、機構の組織改革にも資する計画となるであろう。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://makinoue.asablo.jp/blog/2015/11/18/7914020/tb